企画展「 坂本龍馬の生きた時代 」は
昨年10月18日に終了いたしました
多くの方のご来館誠にありがとうございました!
期間が空きましたが、今回のブログでは
展示していた資料
『太平記評判秘伝理尽鈔』(以下『理尽鈔』)
を引き続き紹介します
出版された書物が身分を越えて
広まっていったことを
『理尽鈔』をもとに確認しました
今回は、身分を越えて広まった後の
『理尽鈔』に注目します
『理尽鈔』の最終巻(巻四十)には
「 非其器者、不可伝授
(そのうつわにあらざれば、でんじゅすべからず)」
と記載されています
この記述から、もともと『理尽鈔』は
多くの人に公開されるものではなく、
限られた人物に人伝いで
伝授されたことが分かります
書名のとおり「 秘伝の書 」と
いった感じでしょうか?
『理尽鈔』は
『太平記』の解釈書という面に加え、
政治の指南書という側面も持ち合わせていたことは、
で紹介しました
「秘伝の書」であった『理尽鈔』は
出版されることにより、
理想的なお殿様や政治の在り方
といった知識を人々に伝えました
しかし、
多くの人々の目に触れることによって
「秘伝の書」として重宝された
『理尽鈔』の価値は下がっていきました
江戸時代中期の人物で、
武家の儀礼などを研究していた
伊勢貞丈(いせさだたけ)
(享保2〈1717〉~天明4〈1784〉年)は、
「 昔は重宝されていたが
今は出版されているので
それほど貴重なものとしては
扱われていない 」
と自身の著書(『安斎随筆』)で述べています
また、『理尽鈔』の内容が
批判されるような事態も発生しました
『理尽鈔』では、
「 主君が配下の者に
思いやりを持って接すれば、
彼らは主君に恩を感じ、
命を懸けて仕えるようになるだろう 」
と述べています
江戸時代中期に江戸で活躍した
学者の佐藤直方(さとうなおかた)
(慶安3〈1650〉~享保4〈1719〉年)は
この計算高いともいえる
『理尽鈔』の考え方を否定し、
「 配下の者は主君から
与えられた恩に関わらず、
命を懸けて仕えるべきである 」
と反論しています
なぜなら『理尽鈔』の考え方は、
恩義を感じない主君には真摯(しんし)に
仕えなくてもよいという
解釈をすることもできるからです
彼は世間の人々が
『理尽鈔』の考え方に影響され、
お殿様が支配する社会の在り方が
崩壊することを危ぶんでいたのです
『理尽鈔』は人々にもてはやされ
浸透していく一方で、
その内容が広まりすぎると
既存の社会の在り方を
揺るがす可能性があるとして
一部の知識人からは危険視されていました
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