特別寄稿「龍馬の小箱」
2023年03月25日龍馬の小箱(2) 獄中有感(ごくちゅうかんあり)
アクトランドは、高知県下では初の総合エンターテイメント施設ですが、龍馬や絵金に関連する資料を幅広く収集しています。
このコーナーでは随時、興味深い資料を紹介いたします。また、前回のように、講演の内容を再録することもあります。高知県の歴史についても幕末に限定せず、幅広くお話しようと思っています。
引き続き、ご高覧いただけましたら幸いです。
今回紹介する資料は、西郷南洲(さいごうなんしゅう)(隆盛)の「獄中有感」です。
西郷隆盛直筆のものは、屏風に仕立てられ、今は沖永良部島(おきのえらぶじま)の町、鹿児島県和泊町(わどまりちょう)の西郷南洲記念館に展示されています。当館が所蔵するものは、彼の甥・西郷従徳(さいごうつぐのり)が書いたものです。
原文を以下に紹介します。
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朝蒙恩遇夕焚抗/人生浮沈
似晦明/縦不回光葵向日/若
無開運意推誠/洛陽知己皆
為鬼/南嶼俘囚独竊生/生死
何疑天附与/願留魂魄護
皇城
右西郷南洲獄中有感 侯爵西郷従徳書
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この「獄中有感」は、西郷隆盛が島津久光(しまづひさみつ)の怒りに触れ、沖永良部島で獄中生活をしていた若き日の想いを、七言律詩(七言八句から成る律詩)の形式であらわしたものです。本文の読み下し例を掲げておきます。
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朝(あした)に恩遇(おんぐう)を蒙(こうむ)り、夕(ゆうべ)に焚抗(ふんこう)せらる。
人生の浮沈(ふちん)、晦明(かいめい)に似たり。
縦(たと)い光を回(めぐ)らさずとも、葵(あおい)は日に向かう。
若(も)し開運無くとも、意は誠(まこと)を推(お)さん。
洛陽(らくよう)の知己(ちき)、皆鬼と為(な)る。
南嶼(なんしょ)の俘囚(ふしゅう)、独り生を竊(ぬす)む。
生死何(なん)ぞ疑わん、天の附与(ふよ)なるを。
願わくば、魂魄(こんぱく)を留(とど)めて皇城(こくじょう)を護(まも)らん。
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次は解釈文の例です。皆さま、西郷隆盛が到達した人生観を味わってください。
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朝に厚いもてなしを受けても、夕べにひどい仕打ちを受けることもある。
人生の浮き沈みは、昼と夜の交代に似ている。
ヒマワリは太陽が照らなくても、いつも太陽の方を向いている。
もし自分の運が開けなくても、誠の心を抱き続けたい。
京都の同志たちは皆、国難に殉じている。
南の島の囚人となった私ひとりが生き恥をさらしている。
人間の生死は天から与えられたものであることは疑いない。
願うことは精魂を込めて京都を守護することだけである。
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